組合大事だなあという話。

平成27年版 労働経済の分析 −労働生産性と雇用・労働問題への対応−|厚生労働省(79-80頁)

第2章 経済再生に向けた我が国の課題
第1節 デフレ下における賃金の伸び悩みとその要因 (PDF)

●より高い賃上げ水準の達成に重要な役割を担う労働組合

2014 年の厚生労働省「賃金の引上げ等の実態に関する調査」の調査票情報を用いて分析した結果(第2−(1)− 19 図)によると、製造業において最頻値の妥結水準が非製造業に比べて高くなっており、規模別にみるとより大きな企業で妥結水準が高くなる傾向が確認できる。
また、労働組合の有無による賃金妥結水準の差をみると、非製造業ではそれほど差はみられないが、製造業において労働組合がある企業ではより高い賃金妥結水準となっている。さらに、規模に関わらず、労働組合がある企業ほど賃金妥結水準が高くなっており、労働組合による賃金交渉はより高い賃金妥結水準へとつながることが示唆される。労使交渉において、個々の労働者の交渉力は限られており、より強い交渉力を持つ労働組合が与える影響は大きいことが確認できよう*1

「第2-(1)-19図業種別・規模別・組合の有無別の賃金改定水準の分布(2014年)」を見ると分かりやすい。大体のカテゴリで、労組がある場合の方が賃上げ幅は大きくなっている。
また、参照されている森川(2008)も興味を引かれる。
RIETI - 日本の労働組合と生産性−企業データによる実証分析−

分析結果のポイント

この論文では、製造業・非製造業をカバーする数千社の企業データを使用し、最近の日本における労働組合と企業の生産性の関係を分析した。その結果によれば、労働組合は当該企業の生産性と正の関係を持っており、量的なマグニチュードは生産性の水準に対して10%〜20%、生産性上昇率に対して年率0.5%前後と無視できない大きさである。労働組合と賃金との関係は生産性との関係と同程度のマグニチュードのプラスであり、労働組合と企業収益の間にマイナスの関係は確認されない。

インプリケーション

(前略)
他方、分析結果によれば、労働組合が存在する企業の従業者数の減少率は労働組合がない企業に比べて大きく、大部分はパートタイム労働者数の変化の違いに起因する。今後、企業別労働組合がパートタイム労働者をはじめとする非正規労働者を取り込む形で生産性向上にどう関わっていくかは、日本経済の成長力向上と格差是正の両立に密接な関係がある。

*1:労働組合が賃金に対しプラスの影響を与える可能性について、森川(2008)「日本の労働組合と生産性」Rieti D.P.08-J-030では、組合が無い企業に比べて組合が有る企業において、約 20%の賃金プレミアムを計測している。