記事メモ

新財界総理と製造業 東レ好調も繊維の産地は苦境:朝日新聞デジタル(2014年3月1日00時38分)

 紆余曲折(うよきょくせつ)はあったものの、次期経団連会長は、合成繊維最大手、東レ榊原定征会長に決まりました。業績の悪い企業に財界総理の打診があるはずもなく、2013年度は過去最高益が見込まれます。

 航空機向け炭素繊維などいろいろやっているから、と思われるかもしれませんが、東レの営業利益の半分は衰退産業と言われて久しい繊維部門が稼ぎます。海外偏重というわけでもなく、合成繊維の生産能力は国内随一の規模です。

 経団連会長内定後、日本最大の繊維産地、北陸を歩いてみました。さぞや「東レ特需」に沸いているだろうと思いきや、一部の勝ち組企業を除き、依然として繊維産業の疲弊は色濃いものでした。

 日本の繊維産業は、1985年のプラザ合意を境に急速に競争力を失い、北陸の織物生産量は1990年の3割以下。今や、世界の繊維生産は中国が3分の2を占める一人勝ち状態です。

 これまで東レは北陸に新事業創成を促す産業集積を形成するなど繊維産地維持の努力を続けてきました。それでも地元では「栄えるのはヒートテックを売る川下のユニクロとその素材を供給する川上の東レだけ。川中の加工業者の経営はきつくなるばかり」という声が聞こえます。

 製造業が日本を支えるという強い自負を持つ経団連新会長が、おひざ元でもある北陸の繊維業界にあらためてどう向き合うか。今後の実行力を測る試金石と言えるでしょう。(「週刊東洋経済」編集部)

5年ほど前に中国で東レの人と話をしたときには、高機能繊維の開発などはあるものの川下展開にはあまり期待が持てないから素材を軸に分野を広げるしかない…みたいなことだったと記憶する。北陸は合繊産地として生き残ってきたけれど、この手の高機能繊維開発の枠の中に食い込むことは簡単ではないのだろう。東レの世界戦略上北陸の存在意義がどのようなものなのか。