湯澤規子(2009)「結城紬を支える人びとの暮らし」地理, 54-10, pp.12-23

p.12

いわゆる地場産業振興や、ものづくりによる地域振興においては重要とみなされる政策や諸制度が、産地を支える人びとのささやかな生産現場においてそれほど強調されて語られない状況は、……非常に不思議に思えたことの一つであった。

p.13

(明治・大正期)において、多くの織物産地では大きな資本による工場生産へ移行し、輸出を視野に入れた大規模生産を模索する中で、結城紬産地は従来からの居座機(いざりばた)による手織り、農家副業による小規模生産という形態を維維(ママ)した。

p.14
柳宗悦(1985)『手仕事の日本』岩波書店

多くの織物産地のなかで結城紬産地は例外的な発展を遂げた特徴ある産地であると指摘

p.15
結城紬生産の分業体制
・産地内分業
・家族内分業 → 湯澤:ライフヒストリーとして調査・分析
2001, 地理学評論74-5, 239-263
2002, 人文地理, 54-2, 131-154
2007, 梶田ほか『地域調査ことはじめ』ナカニシヤ出版
2009, 『在来産業と家族の地域史――ライフヒストリーからみた小規模家族経営と結城紬生産――』古今書院

p.19

柳田圀男(1931)『明治大正史世相編』筑摩書房
明治・大正期において国が政策的に職業を純化しようとする傾向のなかで、農家や漁家がそれまでその経営を支えてきた複雑な副業を投げ捨て、従来の複雑なる家業の交響楽が徐々に崩壊していくことを指摘している。