「百選」入り棚田の16年後

長江の棚田、荒涼…今や耕作1軒 16年前「百選」入り:愛知:中日新聞(CHUNICHI Web)(2015年9月17日)

 農林水産省の「日本の棚田百選」に選ばれている設楽町の「長江の棚田」で十六日、稲刈りがあった。選定から十六年が過ぎ、耕作を続けるのは一軒だけ。荒涼とした風景が広がり、往時の景観は見る影もない。地元では「百選から外してもらうべきでは」との声も上がる。

 稲刈りがあったのは設楽町長江、遠山秀樹さん(65)の四枚の田んぼ(計一・五アール)。これが、現在の「長江の棚田」のすべてだ。

 大型のコンバインが乗り入れ、三時間ほどで作業は終わった。

 一九九九年七月、「四谷の千枚田」(新城市)とともに百選に選ばれた。選定時の規模は九十枚、三・四ヘクタール。十六軒が耕作していたが、高齢化で耕作放棄が進み、「二年前に二軒がやめ、うちだけになってしまった」と遠山さんは話す。

 イノシシが頻繁に出没しては田んぼを荒らす。防護柵を設けたいが、費用は高額。「公的助成を受けるには三人以上で申し込まなければならない。諦めました」。以前は共同で管理していた水路も、一人でやらねばならない。

 遠山さんの義母、とくゑさん(81)は十八歳で嫁いで来て以来、米作りに打ち込んできた。「昔の棚田は、見渡す限り何百枚もずーっと連なって、そりゃあ見事だったよ」。山から掘ってきた土で苗床を作り、這(は)うようにして草を取り、水が枯れないよう毎日見回る。

 「田植えも施肥も、よそに負けんようにと頑張っただよ」。稲作を競った周囲の田んぼに、今はススキや雑木が生い茂る。「ここは土がいいもんで、おいしいお米がとれるだよ。一軒だけになっちゃって、寂しいねえ」

 棚田百選は農村環境整備センターなどのホームページに掲載され、県内外から訪れる人が多い。「一様にがっかりされますね。実態が伴わない百選は、返上してもいいのでは」と遠山さん。

 本紙が、農水省に尋ねたところ、「今のところ、見直す考えはありません。地元から正式に要望があれば、その時点で検討します」(中山間地域振興課)とのことだった。

 (鈴木泰彦)

このあたりらしい。:〒441-2312 愛知県北設楽郡設楽町長江 - Google マップ

「日本の棚田百選」一覧リンク

農水省のページが出ないのが悲しい。個人ページが主。
日本の棚田百選
日本の棚田百選一覧表(全国のリスト)
 個人が全国を回って撮影した記録
ACRES_棚田の主な役割と「百選」の選定方法(一般社団法人 地域環境資源センター)
日本の棚田百選マップ(地図)Google map に位置をマッピングしてある)