中企庁の「中小企業の海外事業再編事例集」、鳥取県の事業継承支援

海外進出:中小企業の失敗事例集 中小企業庁が警告 - 毎日新聞(2015年06月16日 07時00分)

 中小企業庁は、海外進出した中小企業の失敗事例集をまとめた。少子高齢化などで日本の市場が縮小する中、海外進出は中小企業にとっても活路を見いだすチャンスだが、日本では経験しないトラブルもある。同庁は「海外展開に積極的であってほしいがバラ色ではない。事例集を参考に事前に対策を講じてほしい」(幹部)と話している。事例集「中小企業の海外事業再編事例集」は16日にも公表する。

 中国やフィリピン、マレーシアなどに進出した28社の事例をまとめた。中国江蘇省に進出した岡山県の縫製メーカーは2012年に同省から突然、立ち退きを命じられた。従業員の通勤を考えて近場で工場を借りて移転を決めたが、従業員は労働契約解除の際に支払うことが義務づけられている経済補償金を要求。雇用を継続するため支払い義務はなかったが、トラブルを回避して早期に操業再開するために数千万円を支払うことになった。最近は賃金や社会保険料も高騰しており、撤退も検討している。

 信頼していた現地人に裏切られたケースもある。フィリピンに進出した奈良県の車の修理会社は、11年に一晩で修理用の設備や備品などが持ち去られ、損失額は2000万円に上った。時間をかけて信頼関係を構築したと思っていた現地の経営トップも同時に姿を消したという。

 経済産業省の調査によると、中小企業の海外現地法人は12年は5183社で06年(1686社)の約3倍に増えた。事例集では「事業が軌道に乗っても現地任せにせず、自分の目で状況確認を」「撤退の場合は現地従業員に対して慎重な対応を」といった留意点もまとめている。【横山三加子】

上記記事に関する中企庁のウェブページ
中小企業庁:「中小企業の海外事業再編事例集(事業の安定継続のために)」をとりまとめました魚拓
報告書PDFのURL:http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kokusai/2015/150616kaigai1.pdf

事業引継ぎ支援センター:後継者に悩む中小企業を支援、県が開設 譲渡や紹介、機動的に /鳥取 - 毎日新聞(2015年06月03日 地方版)

 県と県産業振興機構は先月、後継者不足などに悩む中小企業を支援する「県事業引継ぎ支援センター」を鳥取市内に開設した。企業間での事業譲渡や、創業希望者との結びつけ(マッチング)、引き継ぎプランの作成などを金融機関や商工団体と連携して行う。事業承継に伴う奨励金も6月補正予算案に盛り込み、廃業・休業の減少を目指す。【真下信幸】

 支援センターは同市本町2の三井生命鳥取ビル4階に設置。経営支援や企業再生などを担当する県と国の4機関も同じ部屋に集約し、機動的に支援できる体制を整えた。

 帝国データバンク広島支店の昨年8月の発表では、抽出調査した県内企業の74・4%で後継者が決まっておらず、割合は全国5位だった。

 具体的には、事業承継に関する相談受け付けやセミナー開催、後継者不在の企業と県内での事業拡大を目指す企業とのマッチングなどを行う。経済産業省所管の独立行政法人中小企業基盤整備機構が管理する全国の企業のデータベースを利用しつつ、県内での創業希望者を集めたデータベースも年内をめどに整備し、個人と企業とのマッチングも図る。親族や従業員など後継者を決めている企業にも、資本委譲や承継計画の策定などをサポートする。

 元銀行員で製造会社の事業承継を手がけた経験のある三沢秀正さん(65)が専門相談員として常駐。今後、税理士や会計士などの資格を持つ人員を追加する予定。

 支援センター設置費用は県が約360万円、国が約500万円を負担。また、県内中小企業の事業を譲り受けた企業を対象に奨励金(正規雇用者の引き受けが条件で1人当たり100万円)を県が支給する方針で、500万円を補正予算案に計上する。

 三沢さんは「経営者のノウハウや取引先との信頼関係など、完全な承継には10年くらいかかり、早めに着手しないと手遅れになる場合もある」と指摘。「経営者が団塊の世代という企業も多く、事業承継に悩む企業は増える。関係機関と連携して取り組みたい」と話している。