小川さやか氏の産経新聞インタビュー:都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌

産経の記事がまともで面白いのが悔しい…(笑)。あっ一応クレームをつけておくと「ナンパされ…」というエロ親父視点が産経の限界性を示していると思います、ハイ。

【アフリカでナンパされ…異色の女性研究者(1)】行商してみたら「貧しい中国人だ!」と言われ(苦笑)…研究はゲンバで起きている 立命館大准教授、小川さやかさん - 産経ニュース2014.11.1 07:00(魚拓
【アフリカでナンパされ…異色の女性研究者(2)】客の前での「痴話げんか作戦」 生き馬の目を抜く世界で生きる知恵 立命館大准教授、小川さやかさん - 産経ニュース2014.11.2 07:00(魚拓
【アフリカでナンパされ…異色の女性研究者(3)】ウジャンジャ(ずる賢い知恵)は、自分だけでなく他者も生きる仕組みができている…立命大准教授、小川さやかさん - 産経ニュース2014.11.3 07:00(魚拓
【アフリカでナンパされ…異色の女性研究者(4)】賄賂も立派な“経済活動”「先進国の常識を無理強い、ダメ」 立命館大准教授、小川さやかさん - 産経ニュース2014.11.4 09:00(魚拓
【アフリカでナンパされ…異色の女性研究者(5)】一夫多妻、〝女子割礼〟…安直な尊重「文化の違い」では、何も解決しない 立命館大准教授、小川さやかさん - 産経ニュース2014.11.5 07:00(魚拓

●インタビューの下地になったと思われる本
Amazon.co.jp: 都市を生きぬくための狡知―タンザニアの零細商人マチンガの民族誌―: 小川 さやか: 本

「すべての文化を尊重しましょう」という文化相対主義の立場に立つと、人権や生命にかかわる慣習を批判することは難しくなる面もあります。
……中略……
ただ、異文化の尊重は「文化が違えば何もできない」を意味しません。……中略……ならば、これらの仕組みができたのはなぜかという背景の文化や社会構造の問題、価値観を解きほぐすことが必要。そこで長期のフィールドワークが重要になる。やはりともに暮らして理解し、そこから解決策を探るしかない
スタティックな見方とダイナミックな見方のせめぎ合いとも言えるかなあと思う。
「異文化の尊重は『文化が違えば何もできない』を意味しません」までは異論はない。
ただ「解きほぐす」が何を意味しているのかなあ…とちょっと思う。
地域を変えるためには地域に寄り添わないといけないというのは全くその通りなのだけれど、どこかで対立・対決しなければならないところがあって、それが(少なくとも中短期的には)非妥協的なものであったときにはどう考えたらいいのだろうとも思ってしまう。この辺りは、開発経済関係の人や地域振興の人やその他諸々の真面目な実践者の人たちの共通する(永遠の)課題だと思うけれども。例えば、現在の地域の経済や産業の詳細な分析ができたからと言って、それで経済や産業の活性化を動かす方策が見えるかと言えば、そうとも言えないんだよね…。業界を知れば知るほど、地域の社会関係を知れば知るほど、これは変えられない・変わらないなあと思ってしまうということもあるし…。アカデミズムと地元のポリティクスの両方に足を突っ込んで、自分の立ち位置・価値観に悩みつつも、それに依拠してやって行かざるを得ないんだろう。
うーん、専門外の日本の家庭のことはわからない(笑)。ただ、タンザニアで暮らしていると生計手段の多様化がこれから重要になるかもしれないと思います。
……中略……
不安定な経済状況に暮らすタンザニア人は、リスク分散と収入の補填(ほてん)のため複数の収入源を確保し、家族で多様な職種に就きます。「どれかが失敗しても他の何かで食いつなぐ、誰かが失敗しても誰かの稼ぎで暮らす」という具合です。仕事にこだわりを持つのは大切ですが、ある仕事で失敗したら、もう後がないと追い詰められないようにするにはどうしたものかと。
ここは、思わず「我が意を得たり」と膝を叩いたところ。
農村や町村規模の市街地の低所得層の暮らしや小規模集落維持の問題に関わる中で、過疎地域の持続可能性を考えるときに、この視点から生活と労働を再評価することがどうしても必要になるんじゃないか、インフォーマルな領域の意義を地域経済政策の中で語れるようにしなければならないのではないか、と常々思っていたので、資本による雇用に頼れない経済を扱っているとやっぱり似たような発想になるのかなあ…と感じた次第。ただ、
「日本の若年ホームレスに話を聞くと、住所不定ということで職探しが難しいという。タンザニアは住所不定でも、マチンガ(行商人)ができる。」
という話の展開には、扱っている問題のさすがの違いを感じたけど(笑)