江崎雄治(2008)「団塊世代の地域人口へのインパクト―郊外における急激な高齢化」、地理、第53巻2号

団塊世代=1940年代後半生まれ」として、このコホートの居住地域別人口の年次推移を追った分析。

10代と20代との比較→非大都市圏から大都市圏への移動
20代と30代との比較→大都市圏から非大都市圏への移動(逆流)
30代以降→ほとんど移動なし。

これと合わせて、東京大都市圏で都心と郊外の間の人口比率から、30代以降は居住地が定着して、60代の退職もUターン等の転居契機にはあまりならないことが示されている。

以上の含意として、
1.地方圏の定住促進において、高齢者のUターンに過度に期待すべきではない
2.大都市郊外の自治体では高齢化対策を急ぐべき
としている。また、戸建て住宅中心の新興住宅地では、第一世代が停留する一方でその子供世代の流出が多く、高齢化速度が速いとのことだ。

興味深かったのが、1930年代後半生まれから70年代前半生まれの各層において、後から生まれた層ほど地元への残留率が高いらしいこと。これへの説明として、
1.就業機会や所得の格差が縮小したこと
2.「潜在的他出者」(農家の次三男のような存在)が急減したこと(少産化)
の可能性を指摘している。
また、1970年頃をピークとして大都市圏の転入・転出数がともに減少傾向にある、すなわち大都市・非大都市間の人口移動が小さくなりつつあることは、ひょっとすると、全国的には地元定着傾向を表しているのかもしれないと思った。両者合わせて、巷間で言われる地方都市の衰退と東京の一人勝ちというストーリーとどう関係するのか、ちょっと興味深い。

関連の文献
Amazon.co.jp: 「豊かな地域」はどこがちがうのか: 地域間競争の時代 (ちくま新書): 根本 祐二
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4480066918/ref=ox_sc_sfl_title_1?ie=UTF8&psc=1
年代別人口推移から地域経済の動向を考えるというアプローチの本らしい。私もちょっとやりかけて中断したこと。まあ、人口構成によるマクロ経済の需給条件の影響を考察するというのは、ポピュラーな方法だとは思うのだけど。