感染域を通過した学生を大学から排除してよいか問題

香川大学 首都圏や関西に立ち寄った新入生の入学式出席断る | NHKニュース(2020年4月7日 18時20分)

香川大学が今月3日に行った入学式で、直前の2週間に首都圏や関西の7つの都府県に立ち寄った新入生44人の出席を、事前の説明もなく、その場で断っていたことが分かりました。

香川大学によりますと、今月3日、高松市で行われた創造工学部の入学式で、受け付けに来た新入生一人一人に過去2週間の行動を尋ね、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、京都、兵庫の7つの都府県に立ち寄ったと答えた44人は、その場で出席を断ったうえで、自宅で2週間は待機するよう求めたということです。

香川大学は今月1日、新入生全員を入学式に出席させる方針を全体で確認していましたが、その後、創造工学部では、特に新入生が多いことから、新型コロナウイルスの感染リスクを少なくするためとして、7つの都府県に立ち寄った新入生の出席を断ることを独自に決めていました。

判断が直前になったため、新入生に対して事前に説明することができず、入学式の翌日になって、出席を断った学生に改めて電話で事情を説明したということです。

筧善行学長は「周知が十分とは言えない面もあったが、学生の安全を何よりも考えての直前の判断はやむをえなかったと考える」と話しています。

ツイッターでの反響としては、「非科学的で無意味」、「差別である」、『プライバシーの侵害だ」という批判。「当然だ」、「何もしないよりはマシ」という声も。
疫病が流行すると、感染区域だと認識された場所にいた人が他の地域の人から忌避されることがよく起こる。川北稔の『イギリス近代史講義』には、17世紀中頃にペストがロンドンで流行したとき、ロンドン郊外の集落ではロンドンから来た人を入れないということが起こったという話が載っている。今回の流行でも2月頃には中国人を忌避する発言が相次いだ。この香川大学の対応は、こうした忌避をより権力的に行ったものだ。
さて、こうした反応が望ましくない、適切ではないのは明らかだが、その背後には不安や恐怖、世間体がある。これらの発現を「その行動は良くないことだから」という理由で押さえ込むことはできるだろうか。香川大学は(入学式は実施するという前提の元では)どうするのが適切だっただろうか。このような、「感染者ではないかと思われる人」を忌み嫌うことは、どの程度の蓋然性があれば、あるいは、どの程度の忌避・迫害であれば、許されるだろうか。