国立市長が一橋大学マンキューソ准教授の発言を「差別だ」と明言、対応する方針

ヘイトスピーチ:一橋大准教授発言 市長「差別にあたる」 大学側へ対応検討 国立 /東京 - 毎日新聞(2019年8月27日都内版)

 一橋大(国立市)の米国人男性准教授が授業時などに朝鮮人へのヘイトスピーチ(差別扇動)を繰り返しているとして、在日コリアンの同大学院生が、民族差別などを禁止した国立市条例に基づく対応を要請していた問題で、同市の永見理夫市長は26日、大学院生側にこの件が「差別にあたる」との考えを示した。大学院生が求めた審議会への諮問は、手続きが定まっていないとしたが、市は被害実態の聴取を含む大学院生側との話し合いを続け、大学側への対応を検討するとした。

 同大学院博士課程の梁英聖さん(37)が申請していた。要請書では、この准教授は5月の授業開始時など、学生を前に「コリアンはばかどもだ。頭がおかしい」と英語で話し、ツイッターなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の自分のアカウントでも、梁さんを中傷したとしていた。

 同市は人種、民族、性別などによる差別を包括的に禁止する条例を4月に施行。差別解消と人権尊重について「市長の使命」と「市の責務」を定め、大学を含む市内事業者に「差別解消に努める」義務を課した。

 市によると、永見市長は音声データで提出された准教授の発言を聞き、梁さんらとの会見の席で「表現を聞いて、差別にあたると考えている」と述べた。

 梁さんは、条例に基づき市が設置する審議会への諮問を求めていた。市長は、審議会での具体的手続きが定まっていないとして、「諮問はできない」との回答書を用意していた。だが、梁さんらとのやり取りの中で撤回し、「条例を持つ市として何ができるか考えたい」と述べた。市担当者は「条例の理念などについて大学側に説明、理解を共有したい」と話している。【井田純】

・市長が「差別だ」と判断を示した
・具体的手続きが未整備だから何もしないという態度を撤回した

梁氏の交渉が事態を前に進めた印象。市は今後、具体的手続きの整備に進むだろう。一人の人の努力が制度づくりを一歩進めた。

市は大学に働きかけると言っている。どの程度まで詰めた話をするかは分からない。「条例の趣旨を10分ほどで説明しました」で終わるかもしれない。市と市長の真剣さが問われる。
他方、大学も安穏とはしていられなくなった。差別やハラスメントへの対応は内部問題ではなくなった。突如外部からモラルを問われることがあり得る時代になったということだ。今後、学内でのハラスメントや差別について行政から対応を求められることが増えてくるだろう。
ハラスメントや差別以外にも、雇用・労働を含む広い人権の保護、法令遵守や運営の透明化などについて、その本旨を実現するために努力する覚悟が大学経営に求められている。あらゆる価値の根拠を問い、相対化するのは大学の役割の一つだが、同時に理念や正義の実現を追究する姿勢がなければその存在は合理化されないだろう。

参考
梁英聖氏のツイッター
梁英聖|note