桜を見る会と下関市立大学問題に関するシンポジウムの紹介記事

「構図が似ている」 桜を見る会と下関市立大「私物化」問題でシンポジウム - 毎日新聞(2020年2月1日 23時06分(最終更新 2月4日 10時30分))

 安倍晋三首相の地元、山口県下関市で1日、首相主催の「桜を見る会」や、首相の元秘書の前田晋太郎市長による大学運営への関与を巡り、経営陣と教授側の対立が続く下関市立大の問題を討論するシンポジウムが開かれた。元東京地検特捜部検事の郷原信郎(のぶお)弁護士▽元文部科学官僚の寺脇研氏▽作曲家で指揮者の伊東乾(けん)・東京大大学院准教授――が登壇し、二つの問題はいずれも首相や市長による「私物化」が疑われると指摘。参加した市民からは「自分たちも『悪いことは悪い』と言わなければならない」という声が上がった。

「法令に反しないなら私物化して構わない意識が問題」

 討論に先立ち、郷原弁護士が講演。二つの問題はいずれも、法令に違反しない範囲なら私物化して構わないとの意識が問題だと指摘した。「桜を見る会」前日にホテルで開かれた前夜祭の問題点も改めて説明。会費5000円に対し、後援会や安倍事務所が会費の不足分を補塡(ほてん)していれば有権者への寄付に当たり、ホテル側が主催者の後援会に値引きしたとすれば、後援会の収支報告書不記載や企業団体献金として違法になると解説した。

桜を見る会」と併せて取り上げられた下関市立大の問題は、2019年、前田市長が推薦した研究者が教授会の審査などを経ずに採用内定とされたことに端を発した。その後、教員人事などの権限を理事会に集約する定款変更が進められ、理事長ら経営陣と「学問の自由」を主張する教授側で対立が続いている。

 一連の問題を自身のブログなどで「大学版『桜を見る会』問題だ」と批判している郷原弁護士は「下関市立大の問題は『桜を見る会』と構図が似ている」と改めて指摘。寺脇氏も「どんな学問をするかは、大学で学問をしている人たちの考え方が十分に反映されないといけない。市民が何のために、大学に税金を投入しているのかを考えてほしい」、伊東准教授も「学問の自由は自律であり、自己点検ということが基本だ。設置者の市長や経営側によって学術や専門、教育、研究がどうにでもなってしまうのは大学ではない」と語った。

「市民の側からももの申す感覚がなければいけない」

 シンポジウムは市民らでつくる実行委員会が主催し、約350人が参加した。同市の女性(64)は「田舎だとうかつに言いづらい部分があるけれど、『悪いことは悪い』と市民から言わないといけないと感じた。安倍さんが総理になったときは誇らしかったけれど、親戚から『山口県は良い目にあっていいね』みたいなことも言われるから恥ずかしい」と話した。

 市内の男性(73)は「地元の特に年配の人間がどのような声を上げるのか、市民の意識が問われている」と厳しい表情を見せた。また、市内の別の男性(71)は「地元には安倍さんを応援する人が多いので、変なことを言うと何を言われるか分からない」と周囲で問題がタブー視されていることを明かしつつ「市民の側からももの申す感覚がなければいけない」と言葉に力を込めた。【佐藤緑平、竹花周】