「こんなはずではなかった」とはたぶん現場の関係者は誰も思っていない

こんなはずでは!中国人爆買いでも潤わない地元経済 ドンキ、イオンが大賑わいの一方で地元商店街は・・・ | JBpress(日本ビジネスプレス)(2015.12.15(火) 姫田 小夏)
鹿児島市で取材したみたいだけれど。なんかイメージが古い気がする。
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まあそうだよね、という反応。

 今から4年近く前の2012年2月。鹿児島県の港湾施設「マリンポートかごしま」を背に、地元の男性がこう案内してくれた。

「この港のすぐ近くに『ドン・キホーテ』が間もなく開店します。これから鹿児島もインバウンド消費で活性化することでしょう」

 その口ぶりや表情から、県民待望の出店であることが伺われた。

ドンキが来ることを楽しみにしていた人は多かったけれど、こういうタイプの期待をしていた人はおそらく少数だったはず。ドンキが客を吸収するという当たり前の危機意識を持っていた商店主ならいろいろと知っている。

 さて、その後どうなったのか。果たして地元経済は活性化したのだろうか。

 結果は地元の期待通りにはならなかった。今、現地で聞かれるのは「これでよかったのか」という声だ。

「これでは“中央の企業”に搾り取られるだけだ」

 こう語るのは地元の商店や中小企業の若手経営者たちである。

ドンキやイオンが経済を活性化するという「地元の期待」があったとは、私は寡聞にして知らない。消費者が期待していたのは知っている。
「これでは“中央の企業”に搾り取られるだけだ」
こういう声はかなり前から地元経済界にはあったと記憶している。

 彼らが「中央の企業」と呼ぶのは、ドン・キホーテやイオンなどのナショナルチェーンのこと。訪日観光客がこうした量販店に向かうのは、大手メーカーの炊飯器や粉ミルクを買うためである。地元の特産品や土産品を買うためではない。おまけにクルーズ船の乗客は船中で寝泊まりするので、地元に宿泊することもない。つまり、ナショナルチェーン、ナショナルブランドの大手企業だけが潤って街は潤わないというわけだ。

 また、次のような声も聞かれる。

「鹿児島の中心部にせっかく天文館という繁華街があるのに、観光客はあまり訪れません。天文館にある老舗デパート『山形屋』も素通りされてしまいます」

こうした声は、ドンキが来る以前からあったし、そういう問題意識で天文館のクルーズ船受け入れなども試されてきていたはずだ。

天文館の商店は銀聯カードの導入や免税システムの推進を行うなど、中国人観光客を受け入れるための工夫と努力を重ねてきた。だが、天文館の老舗店主は「たまに観光客が押し寄せてくることがあっても、結局、全国チェーンのディスカウントストアやドラッグストアで買い物をして船に戻ってしまう」と嘆く。

天文館の人たちは、主観的には(まだ)そういう言い方をするかもしれないとは思う。しかし、天文館にも「工夫と努力を重ねてきたと言えるのか」と考える人はいる。
それに、そもそも天文館にクルーズ船客を大規模に受け入れるという条件はない。だから丸ごと受け入れみたいな発想は成り立たない。こういう記事の作り方をすると、まるで天文館が爆買いの受け皿となり損ね、商店主らの当てが外れたというような印象になってしまう。山形屋天文館もそういうことは初めから狙っていなかったし、そもそもの問題意識が違っていたはずだ。

 訪日旅行客の増加は、地元に新たな商機をもたらす。にもかかわらず、訪日観光客が訪れるのはナショナルチェーンの店ばかり。地元で商機をものにできるのは、一部の商社や流通業者など一握りの企業だけである。「中小・零細企業はなかなかインバウンド消費の恩恵にあやかれないでいるのです」(池亀さん)

これはその通り。なぜなら、現在のブームの中核がそういう構造だから。
だが、その中核の周辺には個人旅行者が結構沢山いる。これらをどう取り込むかが本旨のはずだが、しかしそれにしても、大多数の中小商業がその恩恵を受けることなどあるはずがない。

 この先、こうした状態が続けば、地元の商店や中小企業は自治体のインバウンド施策にまったく協力しなくなるだろう。

えっと……これまでも、そんなに積極的に協力してましたっけ……(汗)いや、、まあ、「今までただでさえ自発的に自分たちを変えようという努力が見られなかったのに」というひそみを置いて「まったく」と言っているなら分かりますけど(汗)

 2014年、訪日外国人の旅行消費額は2兆278億円に達した。その内訳は「買い物代」がダントツで7146億円と35.2%を占める。

 日本でたくさん買い物をしてくれるのはもちろん歓迎すべきことである。「しかし、それだけに目を奪われるのは問題だ」と、国際観光マーケティングの専門家は指摘する。「爆買い」がもたらす経済効果だけを追い求め、自治体も企業も「モノを売る」ことだけに前のめりになってしまっているのだ。

 ちなみに「買い物代」以外では、順に「宿泊費(6099億円で30.1%)」「飲食費(4311億円で21.3%)」「交通費(2181億円で10.8%)「娯楽サービス費(465億円で2.3%)」と続く。

自治体も企業も「モノを売る」ことだけに前のめりになってしまっている」??
観光産業を振興する政策根拠の一つが「裾野の広さ」であることは官民共通の認識だと思っていたんですけれど…?
今問題になっているのは、まさにこの記事が取り上げるような、大手SCや量販店での囲い込みじゃなかったでしたっけ。この「爆買い」をどう広げるか、その次をどう睨むかという問題意識は、とっくに関係者の常識になっていると思っていましたが…?

 この中で地方経済に直結するのが「飲食費」であり「娯楽サービス費」だ。「娯楽サービス」には、美術館や博物館の訪問などの文化体験、スポーツ観戦やテーマパーク訪問、また抹茶体験、着物体験などが含まれる。前出の専門家は「ここを伸ばさない限り、地方経済がインバウンドの恩恵を実感することはできません」という。

この「専門家」は産業連関表を知らないのかな。観光経済学でも宿泊の裾野の大きさには触れられているはずなんだけどなあ…。娯楽サービスはむしろ周辺的で、それはこの統計通りなのだけれど。
体験型観光や文化を売る方向性が強調されるのは、それが宿泊や物販、飲食と結びつくからなのだけれども。

 訪日観光客に手に取ってもらえるような魅力的な商品の開発、施設やサービスの開発が不可欠であることは言うまでもない。さらには、ナショナルブランド店舗に地元の商品や食材を仕入れてもらうなど、インバウンド消費の恩恵が街全体に行き渡るような仕組みを街が一体となって考え出す必要もありそうだ。

ナショナルブランド店舗に地元の商品や食材を仕入れてもらうなど、インバウンド消費の恩恵が街全体に行き渡るような仕組み」……イオンはもうとっくにやってくれていますよ……汗
鹿児島のイオンはかなり地元との共存共栄を意識していて、いろいろと細かいイベントや地元産品の販促、県産商品の大規模な取り扱いなどやっているんだけど。もちろん地元関係者との協議もいろいろとやっている。
しかし、当たり前だけれど、「爆買い」の人たちはそういうものよりも(まあそういうものも買ってくれているけれど)、安心安全のナショナルブランドの日用品や電化製品、化粧品を買っていくわけだ。つまり、この記事が言うような「考え出す必要」はもうとっくに知っているわけである。彼らが直面している課題は、もっと各論的・実践的なことなのである。