「成敗」の日中間の語義の相違について

中国人留学生の書いた文の中に「成敗」という語が出てきたが、文意が通じない。
調べてみると中国語で「成敗」は「成功と失敗」という意味だとわかり、得心した。
そのついでに、こんな研究を見つけた。

栾竹民(1993)「『成敗』小考――意味の”転用”の一例として」鎌倉時代語研究 16, 211-238, 1993-05-30 鎌倉時代語研究会
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これによれば、平安時代までは中国語と同じ意味であったが、平安末期から現在の日本語の意味が生じ、鎌倉時代にそちらに意味が移ってしまった。中国語本来の「成功と失敗」という対義語的意味から、「事の取り計らい、きめ」という意味分野へ移ったということである。
この種の転用が生じた例としては、「善悪」「是非」「決定」があるそうだ。
原卓志(1991) 漢語「善悪」「是非」「決定」「必定」の副詞用法について - 広島大学 学術情報リポジトリ論文PDF