空き家対策に頑張る人の記事

Listening:<空き家>定住希望の若者がいるのに…過疎地、住宅貸し渋り - 毎日新聞(2014年11月15日)
いくつかの地域で空き家問題を聞くと、その深刻さを嘆く一方で、家を貸したり転用したりという方向にはおしなべて消極的だった。理由は、この記事に挙がっていること、「仏壇がある、墓掃除やお盆に帰省する、荷物がある」の他に、「時々使っている」とか「他の用途(倉庫など)に使っている」とかと言われたり、修繕や改装の費用の問題も言われたことがある。また、貸し主としての責任を負うことについても面倒くささを感じるようだ。借りる人に対する漠然とした不安や警戒感もある。
話を聞いているかぎり、空き家問題を嘆く口ぶりとは裏腹に、そんなに困っていないのではないかと感じる。不動産の価値が徐々に毀損されているのだが、資産の目減りが目に見えるわけでなく損失を実感することはない。住人は既に居らず、人が減ることによる自治活動の負担が今更変わるわけでもない。空き家問題は地域全体の問題ではあるが、個人にとっては痛みを感じにくい問題だから、「別にどうでもいい」という本音が出てくるし、人の入れ替わりをほとんど経験したことがない人たちには不安ばかりがつのるのは当然で、結局は「いずれこの集落が消滅しても仕方ない」という気分が出てくるのも仕方ない。
空き家対策は地元に熱心な人がいないと進まないというのはそうだろう。記事にあるそのノウハウ:

  1. 防犯対策になる、集落が明るくなると説得。「大事なのは、その家を地域がいかに必要としているかを分かってもらうこと」
  2. 地域住民があらかじめ移住希望者と面接→家主の安心感
  3. 移住者に「地域行事や消防活動に参加できますか」などと尋ねる→「地域の一員になる」意識を強め、定着を後押し。

こういうことに積極的に関わる人が出てこない地域では、うまく行かないのだろう。だいたいは「ここまでやらなくても…」や「こんなことまでやれない」という気分の方が強いというのが自分の経験から受ける印象。

 田舎暮らしを望む都市部の若者がいる一方で、多くの自治体が過疎に悩む……。実は要因の一つに、空き家が多いはずの過疎地での“住宅貸し渋り”がある。愛知県や長野県の一部では、地域住民が家主を説得して賃貸物件を掘り起こし、人口アップに貢献している。果たして過疎解消の処方箋の一つとなるのか。【町田結子】

 午後6時、築100年を超す古民家に明かりがともった。愛知県豊田市北部の山あいにある旭地区(旧旭町)。住み始めて1年の渡辺照見さん(36)、さとみさん(37)夫婦は「地元の方の助けがなかったらここに住めなかった」と感謝する。改修費200万円は半分が市の補助、残りが自己負担で、家賃は「超格安」だ。有機野菜や米を作って生計を立て、農作業で迷ったら近所の教えを請う。

 岐阜県大垣市出身の照見さんと、名古屋市出身のさとみさんが知り合ったのは5年前。豊田市などが企画した、旭地区に住み込んで農業を体験する定住促進事業を通してだった。2年半の事業終了後、ここに住むと決めた2人。だが、空き家はたくさんあるのに貸家が一軒もない。当時、副区長だった鈴木正晴さん(68)が「若い2人が住みたがっている。何とかせんと」と家主と交渉を重ね、古民家を借りる承諾を得た。

 中山間地の諸問題に詳しい名古屋大の高野雅夫教授は「過疎地では空き家が増える一方、貸してくれる人はごく少ない。需給ギャップは全国的な傾向だ」と指摘する。全国の過疎自治体などでつくる一般社団法人「移住・交流推進機構」(東京)は今年1月、中山間地の物件情報を提供する「空き家情報バンク」を活用している約700自治体に登録物件数を尋ねた。「9件以下」が58・6%と過半数を占め、貸家はごく限られているのが現状だ。

 北部に広大な過疎地を抱える豊田市も、2010年に「空き家情報バンク」を開設。登録物件は10件程度なのに、県内外の200世帯400人以上が待機リストに名を連ねている。それでもバンクを通して48世帯107人の移住が実現し、そのほぼ半数を旭地区が占める。抜群の実績の裏にあるのが地域住民の努力だ。

 旭地区で鈴木さんとともに物件を探す活動をする安藤征夫さん(61)によると、家主は、仏壇がある▽墓掃除やお盆に帰省する▽荷物がある−−などを理由に貸すのをためらう。これに対し、防犯対策になる、集落が明るくなると説得する。「大事なのは、その家を地域がいかに必要としているかを分かってもらうこと」と安藤さん。地域住民があらかじめ移住希望者と面接していることも家主の安心感を生むという。

 一方、移住者に「地域行事や消防活動に参加できますか」などと尋ねることが、「地域の一員になる」意識を強め、定着を後押しする。同地区では渡辺さんら新住民を中心に縁日など新たな行事も生まれた。

 長野県阿智村の山あいで平地が限られ、新築が難しい清内路(せいないじ)地区も成功例として知られる。村と住民が空き家の発掘に力を入れ始めた06年以降、地区の人口の7%にあたる40人以上が移住した。小学校の全校児童26人の半数が、もともと地区と縁のないIターンした家庭の子どもだ。大阪からのIターン組で「空き家を考える会」会長の安藤俊治さん(64)は「地区には60軒以上の空き家があるが、貸し出せる物件は5軒ほど。賃貸物件を掘り起こし、移住希望者の選択肢を増やしたい」と意欲を燃やしている。