日立製の家庭用掃除機用パワーヘッドD-AP38が、回転ブラシを動作させると大きな異音を立てるようになった。
中の部品であるプーリーブクミCV-SW7000 027に付けるワッシャーに、同じサイズのワッシャーを1枚足して2枚にし、タイミングベルトを交換したところ、異音が収まったので報告する。
異音発生までの経緯と原因の推定
2013年7月発売の日立製紙パック式クリーナー(CV-PY300)に付属する「パワーヘッドD-AP38」はモーター駆動の回転ブラシが床面のゴミ等を掻き取る方式の吸い口である(ノズルとも言う。以下では「吸い口」と称する)。
週1回1時間弱、フローリングを主、6畳の畳とキッチン前カーペットを十数年掃除したところ、動作中に床面に吸い口を接地させると「ギャー」という大きな異音を立てるようになった。
分解してモーターとブラシにつながる各部品を点検したところ、以下の部品に消耗が認められた。
1.ゴム製のタイミングベルトCV-SY7000 026
プーリーとモーター直結のギヤに噛む山が少しすり減っていた。
ただし、吸い口を通電して回転ブラシを空転させつつ、手で抵抗を掛けて回転を止めてみたところ、モーターの回転も止まった。このことから、ベルトの滑りは異音の原因ではないと考えられた。
2.プーリーブクミCV-SW7000 027と、付属の円柱状の金具
プーリー部の軸が摩耗して細くなっていた。また、軸受けとなる円柱状の金具の穴が摩耗して大きくなっていた。これにより、軸と軸受けの間に隙間ができてガタツキが出ていた。
プーリーの樹脂がワッシャーとの摩擦によって削れ、ワッシャーがプーリーにめり込むほどのへこみができていた。これにより、プーリーと回転ブラシの噛み合わせが緩むようになっていた。これにより回転ブラシが床面からの抵抗を受けたときにプーリーとのかみ合わせが外れ、両者の接合面がぶつかり合うことが異音の主因ではないかと推測された。
対策
プーリーの摩滅によって生じた隙間を埋めれば、プーリーと回転ブラシの噛み合わせが回復するので、異音が止まるのではないかと考えた。
プーリーにできたへこみの深さは、付属のワッシャーと同程度であった。そこで、その隙間を埋めるために、付属ワッシャーと同じ大きさのステンレス製ワッシャーを1枚追加して組み立てた。
まだ隙間は残っていたが、ワッシャーは1枚しかなかったため、1枚のみの追加にとどめた。ワッシャーとプーリーの樹脂面間の摺動よりも2枚のワッシャー間の摺動が大きくなることを期待して、ワッシャー表面を観察して滑りやすそうな面を選んで組み立てた。
また、タイミングベルトを交換した。修理前にすでに新品のタイミングベルトを入手していたため、この際交換した。
結果
組み立てた後、通常通り使用したところ、異音は発生しなかった。また空転時の振動が小さくなった。異音発生前の状態に復調し、以前通り使用できるようになった。ただし、壁に吸い口前面を強く押しつけるなどして大きな負荷を掛けると、小さいながらビビリ音が発生した。
症状は改善したものの、完全回復までに至っていない理由には、プーリーと回転ブラシの隙間が完全にはなくなっていないこと、回転軸のガタツキが残っていることの2点が考えられる。
修理時の注意点
分解組み立て時の注意点を記す。
- 殻割りするとき、組み立てるときに、ケース部品の爪を割らないように慎重にする。吸い口前面のゴム製エプロンのはめ込みがズレやすい。
- 分解時には部品間の電気配線を切らないように注意する。
- 組み立て時には配線の取り回しをよく観察し、ケース部間への噛みこみや挟み込みがないように処理する。細いマイナスドライバーや竹串、ピンなどで整理・押し込むなどする。
- 回転ブラシのスイッチになるボールを止めておくために、マスキングテープなどを使うと組み立てが楽になる。
- 回転ブラシと対向する小型ブラシ2個の取り付け方向に注意する。回転ブラシの両端にある緑と青の色に合わせる。反対向きにすると回らない。
- モーターなどにスポンジがクッションとして使用されている。劣化している場合は似た素材で張り替えるとよい。本例の個体では、以前の分解掃除の際、桃を買ったときに付いてきたスポンジに交換した。
まとめ
吸い口の回転ブラシの故障と異音発生というトラブルの一因にはプーリー部品の摩耗があり、その摩滅部分を適切に埋めることによりトラブル解消が可能であることを示した。
本例に示した手法は、(1) 交換用部品の入手が難しい場合の対策になりうる、(2) 無料ないし極めて安価に修理できるという2点において優位性がある。
ただし、摩耗した軸部の回復を含む完全な修復には至らないため、新品時と同等の改善はできない。動作時の騒音と振動をさらに小さくし、吸い口の動作寿命を更に延ばすには、プーリーブクミの一体的な交換が有効であろう。なお交換部品CV-SW7000 027は軸受けとなる円柱状の金具も付いている(本稿執筆時点、税別販売価格1,560円)。