文科省のGP事業が仕分けられたという話。
赤字で死にそうな所にやっとカンフル剤を打てたと喜んでいたら、いきなりはしごを外された!…って格好の所はどうするんだろう…と、遠い目でつぶやいてみる。
◇教育ルネサンス取材班・松本美奈
〈要約〉
・大学教育の支援事業が仕分けで廃止と認定された
・これに対し大学側は反発を強めている
・文科省は、限られた予算を再構築する必要がある予算カットに困惑と反発
大学の教育改革を文部科学省が資金面で支える事業が、先月の政府の事業仕分け第3弾で廃止と認定され、大学の間に困惑と反発が広がっている。
廃止とされたのは「GP」事業。教育改革への試みを言う国際的な教育用語「Good Practice」の略で、「優れた取り組み」と訳される。「大学教育の質の向上」や「地域・社会が求める人材養成」に直結する取り組みを国が後押しするのが骨子で、海外評価が低い日本の大学教育のレベルアップを目指して2003年度に始まった。
大学はホームページや成果発表会などを通じて取り組みの実績・内容を公表することになっており、この事業には大学の世界に競争意識を持ち込む狙いもある。
これまでに4000件が採択されてきたが、07年度に広島大学が実施した調査では全国の9割を超える学長が「よい影響があった」と評価し、中には、学生が提案した授業を開設する岡山大の取り組み(05年度開始)のように、他大学に広がったものも少なくない。
超氷河期が続く就職事情も踏まえ、今年度からは「大学生の就業力育成の支援」につながる取り組みも対象に加えられ、今年度は123億6800万円の予算枠に対し、計546件が採択されている。
来年度予算として文科省は139億円を要求していたが、これがすべて廃止。「教育内容を改善するのは大学の本来業務であり、経常費で対応するのが筋」というのが、政府の仕分け人が挙げた主な理由だった。
これを受けて、公立大学協会が11月20日に「反対の緊急声明」を、日本私立大学団体連合会も25日に「事業仕分け結果に対しての緊急声明」を文科相に提出、まだまとまった動きが出ていない国立大でも反発は強い。
「もう大学には余力がない。どれだけGPで助かっていたかもっと理解してほしい」と言うのは、元文部科学次官の結城章夫・山形大学学長。財政再建の旗印のもと、国立大学に対して国が支出する運営費交付金は、この10年、毎年1〜2%減額され、私立大学への補助金も増えていない。
GP予算には、減少が続く国からの支援を補完するという意味合いもあるだけに、「意欲ある大学の努力に水を差す」と結城学長は語る。
山形大の場合、今年度分で新たに採択された就業力育成事業に備え、任期付きの担当教員の採用も内定しているが、来年度以降の人件費は自前で捻出せざるを得なくなりそうだ。
2000万円の予算獲得で、地域密着型の私大として地元企業と連携して社会的自立を学生に促す事業を計画していた愛知東邦大の福島一政理事は「後戻りできない。自力で費用を捻出するしかない」と嘆く。
「なぜ一番でなければいけないのか」。研究予算もそんな理由から昨年度の仕分け第1弾で削減されているだけに、GP事業の審査などにかかわってきた国際基督教大の絹川正吉・元学長は「教育は国家百年の計。目の前のことだけで判断する軽薄さに憤りを感じる」と怒りを隠さない。
一方で、「実効性が疑わしい」「効果が薄いバラマキ」といった仕分け側の指摘も全否定はできない。こうした指摘に対して反論するためにも、大学はどうあるべきなのか、どんな役割を担わなければならないのかについての全体構想を、文科省は明確に示すべきだろう。その上で、予算・事業の再構築を進めてほしい。