NHKニュースウオッチ9:▽工場閉鎖を食い止めろ・自治体担当者の必死の思い その戦略は…

関連ニュース:工場の閉鎖 約100か所に

http://www3.nhk.or.jp/news/k10013940161000.html

6月29日 18時31分
世界的な不況で雇用情勢が厳しさを増すなか、ことし閉鎖した工場や閉鎖が決まっている工場が、電機や自動車関連を中心に主なところだけでも全国でおよそ100か所に上ることが、NHKの調べでわかりました。専門家は「過去に例のないほど短期間にあらゆる業種で工場閉鎖が起きており、対策が必要だ」と指摘しています。

NHKが全国の従業員50人以上の主な工場について都道府県を通じて調べたところ、ことしに入って、これまでに閉鎖した工場が48か所、閉鎖が決まっている工場が49か所に上り、工場閉鎖が電機や自動車関連を中心にあわせて97か所に広がっていることがわかりました。この結果、地域の雇用への影響は少なくとも1万5000人余りに上ります。工場閉鎖の件数は去年の同じ時期と比べて7倍近くになっているうえ、その60%近くが操業してから20年以上の工場で、長年、地域を支えてきた雇用の受け皿が急速に失われている実態が浮き彫りになっています。さらに、工場が閉鎖する市町村では、今後、懸念される影響について、税収の大幅な減少や人口の流出などをあげています。これについて、地域経済が専門の東京大学大学院の松原宏教授は「過去に例のないほど短期間にあらゆる業種で工場閉鎖が起きており、IT不況のときなどと比べても影響ははるかに深刻だ。地方都市の衰退を招かないため、新たな雇用を生み出す対策が必要だ」と話しています。

ニュースウォッチで紹介された京丹後市の企業誘致課の取り組み

市の組織一覧からみると、「企業誘致課」はなくて「産業雇用総合振興課」になってるのだが、聞き間違えたかな?
 
担当者(名前をメモし損ねたorz)「工場閉鎖と一口に言うのは簡単だが、地域に金が回らなくなるので大変。」
●工場を回ってご用聞き。
どんな細かいことでも応えようとしている。
・工業団地のカーブミラーの前にある立木が茂ってカーブミラーを見づらい→その場で剪定するように手配
・食品工場が敷地内に畑を作りたいが、石などが多いので取り除きたい→手伝いに来る
このほかにも資金繰りなど多様な相談を受け取っている。

●地元企業と大手企業とのマッチング
・丹後縮緬の機業家と大手繊維メーカーとのマッチング。繊維メーカーの開発した新繊維を使った新しい織物を作れないか。

●企業が進出したくなる人材育成
・網野高校にIT企業から人を派遣して本格的な情報教育を進めている。
担当者「(企業誘致課としては)外にどんどん営業に出て行くことが必要。」

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産業振興の部局が外回り主体なのは活発な自治体ではよく見られることだが、企業誘致関係が積極的に外回りをしているという例はあまり多くないと思う。特にすでに立地している企業を回ることは珍しい。上述の「産業雇用総合振興課」という部署の守備範囲は「企業誘致、雇用対策、工業団地、産学官連携、産業人材育成など」と、産業振興畑にかなり食い込んでいることも関係しているのだろう。
一方従来通りの「商工振興課」の対象は「商工業振興、中小企業経営支援、織物業振興、商工イベントなど」となっていて、こちらは商業者と伝統産業主体になっているようだ。むしろこちらの担当者の方が動きにくいのではないか。商業振興もやるべきことはたくさんあるし、伝統産業振興も制度的に面倒くさいことが多いが、旧来のジャンルで線引きして国の支援枠組みに沿った分業をしていると、枠組みにはまった発想になりがちで動きづらいような印象がある。
反面、工業系の立地、市場開拓、産学連携、人材育成などというジャンルは、まあ経産省がらみにはなるけれど、商業系や伝統産業系に比べると間口が広いし取り組みの進め方も柔軟にやれそうな感じを受ける。工業が分工場主体で構成されている地域では、立地担当と産業振興が融合するのは有効ではないかという気がする。
もっとも、丹後は分工場主体と言うよりも、規模は小さく性質もかなり異なるが、諏訪・岡谷のような地域企業を主体にした産業習性と言う方が正確だろう。こうした地域企業の存在感があって、それが行政が受け止めるというつながりが長く保たれてきていることも、NHKが紹介したような機動力を支えているのだと思う。ただ、以前からこうしたきめ細かいやり方をしていたかどうかはわからないのだが。
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人材育成について一つ。
集積が薄い地域で工業系の人材育成の方向を決めるのは簡単ではない。分野の見極めが難しいからだ。ともすれば、地元経済界や役所の支配層が描いた夢と希望的観測とに引っ張られて、受け皿が見つからないような分野・職種の教育コースを作ってしまう。現存産業のニーズや見通しの根拠がそもそも存在しないので、新産業を移植しようというような発想に従ってしまうからだ。こうした産業開発は計画と実施の間に相当のタイムラグが存在する上に、教育課程が数年単位であるのに比べると相当長くて時間感覚にズレがあって同期が難しい。おまけに、新産業の誘致や育成は経済動向に相当程度左右されて不確実性が大きい。労働需要側にそうした根本的な不確実性がつきまとう反面、労働供給側には個人の人生ベースで引き受けなければならない職業選択のリスクが存在する。そうしたわけで、そもそも職業教育は確立した職種でなければ、相当程度、その教育コースを選択する個人に不確実性のリスクを引き受けさせる傾向があるわけだ。したがって、将来の産業分野を見据えた人材育成という方針はきわめて正論なのだが、こうしたリスクの側面をどのように処理するかが難しい課題になる。とりわけ、高校や大学、行政などという一種のお墨付きがある場合、下手をすると育成された若年者たちにとっては、さんざん持ち上げられた上ではしごを外されたというようなことになりかねない。現在のポスドク問題はその一例だろう。人材育成(とくに若年者向けの教育)は比較的短期(数年程度)で出来てしまうけれど、その人生に与える影響は何十年という長期にわたる。その一方で地域労働需要の動向は短期的な景気動向とともに中長期的な産業構造と地域間分業の動向に左右される。行政と地元経済界とは、このズレを緩和するという責任があるのではなかろうか。

追記:ニュースで出てきた閉鎖工場の都道府県別一覧

国内工場の閉鎖(従業員50人以上)NHK「あすのニッポン」プロジェクト調べ

  閉鎖 閉鎖予定
北海道 5 0
青森県 0 1
岩手県 2 4
宮城県 0 1
秋田県 3 0
山形県 0 0
福島県 1 5
茨城県 2 5
栃木県 3 1
群馬県 0 1
埼玉県 2 1
千葉県 2 3
東京都 0 0
神奈川県 5 4
新潟県 1 0
富山県 2 3
石川県 1 0
福井県 1 0
山梨県 0 0
長野県 1 2
岐阜県 2 3
静岡県 0 3
愛知県 0 2
三重県 2 0
滋賀県 3 1
京都府 0 0
大阪府 0 0
兵庫県 0 0
奈良県 0 0
和歌山県 0 0
鳥取県 0 1
島根県 0 0
岡山県 1 3
広島県 0 0
山口県 0 0
徳島県 0 0
香川県 0 0
愛媛県 2 1
高知県 0 0
福岡県 1 1
佐賀県 1 1
長崎県 0 0
熊本県 0 1
大分県 3 0
宮崎県 1 0
鹿児島県 1 1
沖縄県 0 0
合計 48 49