Age Heaping と Togetter の元々へ。

●「素数蝉のように周期が!?」 インドネシア人口ピラミッドの不可思議な形状を考察するTL - Togetterまとめ http://togetter.com/li/988713

人口ピラミッドの age heaping についてのツイートのまとめ。
この起点となっているツイートを見てちょっと不思議に思った。

やなせさんのツイート: "インドネシア人口ピラミッド、どうしてこうなったのか 自分の年齢を気にしない文化なのか https://t.co/yPcvUCkpD2" https://twitter.com/ynsitx/status/743404238357749761/photo/1

「どうしてこうなったのか 自分の年齢を気にしない文化なのか」
とコメントしているが、しかし、合わせて提示しているグラフ画像には、そもそも age heaping に言及されていたのではないか。
だとしたら、この「やなせさん」はなぜその言及を無視したのか。「やなせさん」は、どこからこの画像を持ってきたのだろうか。

このツイート時間は2016-06-16 20:25:56となっている。
画像では、「図2 インドネシア 1990年人口ピラミッド」とある。数字は全て全角。「1990年10月1日現在」という注釈の数字は半角。年齢目盛りは5歳刻み。

Googleの類似画像検索をしてみる。

●フロッグ&トード「自分の年齢を知らないということ」 http://blogos.com/article/41161/
・オリジナル→カエルの卵 : 自分の年齢を知らないということ http://blog.livedoor.jp/ideas_frogegg/archives/8916459.html
類似のデザインで「インドネシア人口ピラミッド(2000年)」が出てくる。
こちらの日時は「2012年06月14日 09:32」。
「出典:西(2006, pp. 4)より引用」とある。張ってあるリンクは下記。
・西 文彦「カンボジア人口ピラミッドエストレ-ラ (150), 20-23, 2006-09 統計情報研究開発センタ- http://ci.nii.ac.jp/naid/40007470788
→電子ファイルのリンクはない。「フロッグ&トード」氏がこの文献を元に作成したグラフだろうか?「引用」と書いてあるが?

Sinfonica - 刊行物 http://www.sinfonica.or.jp/publish/index.html
エストレーラ」誌の電子版はないようだ。

インドネシア人口ピラミッド | 水晶堂 http://suishodo.net/888
2009/06/29と記載。
同じデザインで、「図1 インドネシア 2000年人口ピラミッド」とある。

http://www.stat.go.jp/info/meetings/develop/indpd.htm
国勢調査をすると、自分の正確な年齢がわからないので、30歳とか45歳とかキリのいい数字を言う人が多いためにこういうおかしな分布になるのだという。

とある。このURLはリンク切れになっている。だからURLだけの記載は良くない。ページタイトルなどを併記するのが大事。

このリンク、2011年7月にはまだ生きていたようだ。
インドネシア人口ピラミッドのグラフを作りたいのですが、もとになる資... - Yahoo!知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1166859116

このURLで検索すると、上記の西氏の論文が引っかかってきた。
「(財)統計情報研究開発センター発行「ESTRELA」平成 18 年 9 月号掲載」として、総務省統計局にPDFがあった。
・人口問題−リンク− http://home.hiroshima-u.ac.jp/mfukuok/er/EV_P(2).html
※福岡正人氏(元広島大学の地球資源論研究室)が作成したページ。Earth Resources Research) http://home.hiroshima-u.ac.jp/mfukuok/er/index.html (福岡先生は2016年3月で退官されたようです。こういうのは貴重なので残してほしいですね。)
こちらに以下の記載があった。

インドネシア人口ピラミッドとエイジヒーピング(Age Heaping)  http://www.stat.go.jp/info/meetings/develop/indpd.htmhttp://www.stat.go.jp/info/meetings/develop/pdf/ind_pyra.pdf
 西 文彦氏による。2013年7月、12p。

カンボジア人口ピラミッド  http://www.stat.go.jp/info/meetings/cambodia/pdf/pyramid.pdf
 西 文彦氏による。2006年7月、5p。

これらの修正後のリンクは生きていた。

総務省統計研修所 西 文彦(2013年7月24日)「インドネシア人口ピラミッドと Age Heaping」 http://www.stat.go.jp/info/meetings/develop/pdf/ind_pyra.pdf
・西文彦(総務省統計研修所研究官室)「カンボジア人口ピラミッド」 http://www.stat.go.jp/info/meetings/cambodia/pdf/pyramid.pdf
・置き場:統計局ホームページ/統計に関する国際協力/国際協力・交流/インドネシア中央統計庁(BPS)に対する技術協力 http://www.stat.go.jp/info/meetings/develop/indones.htm
これらのPDFのグラフは非常に鮮明だし元となる人口分布表も付いているので、これらのグラフは西氏が作成したのではないかと思われる。

●Milky_Holsteinのぷにぷに人体実験 H26.01.31(金)インドネシア人口ピラミッド http://milkyholstein000.blog.fc2.com/blog-entry-2060.html
こちらのブログでも、「図1 インドネシア 2000年人口ピラミッド」が参照されている。こちらでは引用元が明記してあり、しかもそのリンクは上記PDFと等しい。

しかし、上記2013年7月の「インドネシア人口ピラミッドと Age Heaping」にはそれより前のバージョンがあるのではないか。

理由1:上記の「Yahoo!知恵袋」は2011年7月18日の投稿で、インドネシアの年齢別人口分布について、「ちと古い2000年のです」と返答しているから、2010年分が記載されている上記PDFとはバージョンが異なっている可能性が高い。
理由2:上記の「フロッグ&トード」氏の引用画像では、年齢目盛りが1歳刻みになっていて、上記PDFとは画像が異なっている。

インドネシア情報局 いい男が少ない? インドネシア女性の憂鬱 http://infoindonesia.blog17.fc2.com/blog-entry-396.html
こちらは、[2009/03/11 13:46]という日時。
「2000年人口ピラミッド」の図が「総務省 統計局 インドネシア人口ピラミッド 2000年 より抜粋」として紹介されている。5歳刻みであり、「フロッグ&トード」氏の引用画像とは異なっている。

そこで、「フロッグ&トード」氏が参照している西氏の「カンボジア人口ピラミッド」論文を再度よく見ると、なんと、こちらの「2000年人口ピラミッド」図は1歳刻みになっている!
やはり「フロッグ&トード」氏は、記載通りこの論文から画像を取ってきたようだ。しかし「表3」という表記はトリミングされているようで、今ひとつ確証はない。そしてPDFをよく見ると、西氏自身、このグラフをどこかからコピーしたように見える。つまり、オリジナルは他にあるようだ。

以上をまとめる。
2006年カンボジア論文:「2000年人口ピラミッド」。1歳刻み。コピー。
2009年3月、「2000年人口ピラミッド」。5歳刻み。統計局。
2013年インドネシア論文:1990年、2000年グラフ。5歳刻み。オリジナル的。
以上から、どうやら、「2000年人口ピラミッド」の図には2バージョンあり、それらは2009年には既にあったようだ。だが1歳刻みと5歳刻みのどちらが先かは分からない。

2013年「インドネシア」論文には5歳刻み、2006年「カンボジア」論文には1歳刻みが掲載されていて、それは2006年以前に作成されていたらしい。そして、2013年論文にはその前バージョンがあったらしい。

●2013年インドネシア論文の前バージョンか?
かろうじて、グーグルのキャッシュが残っていた。
・統計局ホームページ/インドネシア人口ピラミッドとエイジヒーピング(Age Heaping) http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:mCESbv-dXzUJ:ftp://157.205.71.186/test/stat/info/meetings/develop/indpd.htm+&cd=9&hl=ja&ct=clnk&gl=jp
・FreezePAGEで保存してみた→http://www.freezepage.com/1466232371GVQURJODDG
日付は「2009/06/18」。
キャッシュは「2016年6月14日 04:08:55 GMT に取得」とある。ごく最近になって削除されたのだろうか。

このキャッシュ内の文「1980年から1990年にかけては、 Age Heaping」で検索すると、上記の「インドネシア人口ピラミッド」に記載されている「http://www.stat.go.jp/info/meetings/develop/indpd.htm」がヒットする。そして、はてなブックマークでブックマークされていた。

はてなブックマーク - 統計局ホームページ/インドネシア人口ピラミッドとエイジヒーピング(Age Heaping) http://b.hatena.ne.jp/entry/www.stat.go.jp/info/meetings/develop/indpd.htm
最も早いブクマが2009/06/18。ページ掲載後まもなくブックマークされている。
さらに、2012年4月頃にはてなブックマークで少し話題になったようだ。
これが、「インドネシア人口ピラミッド」に関するオリジナルではないか。
これが、2012年4月以降にこの元のURLから削除されたが、ftpサーバには残っていて、それをグーグルがクロールしてキャッシュに残していたということのようだ。
だが、2006年カンボジア論文にある1歳刻みの「表3 2000年人口ピラミッド」のオリジナルは見つからない。ひょっとすると、西氏がカンボジア論文を執筆するときにグラフを作成して、それを画像としてコピーしただけなのかもしれないし、ウェブに公開していない資料があるのかもしれない。

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本題に戻る。
「やなせさん」の掲げた画像をみると、このキャッシュに残る画像によく似ている。現在の2013年PDFとはフォントが異なっている。
「やなせさん」がどこから画像をコピーしたのかは分からないが、そのオリジナルはこのキャッシュ画像ではないかと思われる。そして、もしこのキャッシュ(と同じページ)を直接参照していたとすれば、Age Heaping についても目にしていただろうと思われる。ただし、このページには Age Heaping の説明があまり詳しく載っていないから、「やなせさん」は意味が分からなかったのかもしれない。実際、Age Heaping の説明としては「この現象が起こる原因は、その国または地域において、自分の年齢を正確に知らない人が多いことである」という記述しかない。それが「自分の年齢を気にしない文化なのか」というツイートに表れているのかもしれない。